新幹線を降りて富士山を見に行く

車窓から富士山が見えるのは数分です。この記事は、その数分で満足せずに新幹線を降り、富士山のふもとまで行く人のための道案内です。降りられる駅が限られているという前提から始めて、新富士・三島・静岡のそれぞれで何ができるか、世界文化遺産の構成資産である三保松原や富士山本宮浅間大社にどう向かうかを、自治体や当事者の公式資料で確認できる範囲にしぼって書きます。
降りられる列車が限られている
まず前提として、のぞみは三島・新富士・静岡のいずれにも停まりません。新富士に停まるのはこだまだけ、三島と静岡はこだまと一部のひかりです(JR東海ツアーズ)。途中下車する旅は、切符を買う段階でほぼ決まってしまうということです。
新富士駅 改札の外がもう展望地
富士市は新富士駅の富士山口を市内の富士山ビューポイントのひとつに挙げ、「東海道新幹線の駅から降りると、富士山が出迎えてくれる」と紹介しています(富士市)。乗り換えも移動もいらない場所が展望地として扱われている、というのがこの駅の性格です。
ひとつ注意があります。新富士駅は在来線と接続していません。東海道線と身延線が通るJR富士駅は別の駅で、富士市が両駅間で使えるバスを案内しています(富士市)。乗り継ぎを含む予定を組むなら、ここを見落とさないでください。
三島駅 溶岩流の上の公園と、吊橋
三島駅の南側に楽寿園があります。昭和29年に国の天然記念物および名勝に指定された公園で、園内で見られる三島溶岩流は、約1万7千年前から1万年前に富士山の噴火で流れ出た溶岩流の末端と考えられています(三島市)。富士山が遠くの風景ではなく、足もとの地面そのものだと分かる場所です。噴火そのものについては活火山としての富士山と宝永噴火で扱います。
もうひとつが三島スカイウォークです。三島市は全長400メートルの人道専用のつり橋と説明し、「橋の上からは日本一高い富士山と、日本一深い駿河湾の両方を望むことができます」としています(三島市)。行き方は、JR三島駅南口の5番乗り場から東海バスで約26分。運行は1時間に1〜2本なので、行きも帰りも先に時刻表を見てください(三島スカイウォーク アクセスの路線バス時刻表)。
静岡駅から三保松原へ
三保松原は、世界文化遺産「富士山」の構成資産25件のひとつです(静岡県)。富士山頂の南西約45キロにある砂嘴(さし。海流が運んだ砂が細長く突き出た地形。総長は約7キロ)を覆う松林で、天女と漁師の交流を描いた羽衣伝説の舞台です(文化庁)。なぜ45キロも離れた海辺の松林が富士山の遺産なのかは、富士山はなぜ世界文化遺産なのかで扱います。
静岡駅から東海道線で清水駅へ。清水駅から三保方面行きのバスで約25分、「三保松原入口」で降りて徒歩約15分です(静岡市)。松原の入口近くには静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」があります。土日祝日のみ運行の「世界遺産三保松原」バス停を使えば徒歩約5分だと静岡市は案内しているので、曜日が合うならそちらが近道です。
富士宮 浅間神社の総本宮へ
富士山本宮浅間大社は、全国に多数ある浅間神社の総本宮とされる神社で、駿河国の一宮です(富士宮市、静岡県)。現在の本殿は慶長9年から造営が始まり、同11年に正遷宮が行われたもので、下層の上に社殿が載る重層の形式は「浅間造」と呼ばれ、他に例のない唯一の遺構だと静岡県は説明しています。境内の湧玉池は富士山の湧水を水源とし、かつて登拝者はここで身を清めてから山へ向かいました(文化庁)。文化庁の解説には、富士山の八合目以上は1779年に幕府の裁許で当社の支配権が認められ、1877年頃に明治政府がいったん国有地と定めたものの、1974年の最高裁判所の判決に基づいて2004年に浅間大社へ返還された、とあります。
最寄りはJR身延線の富士宮駅で、大社まで徒歩10分です(富士宮市)。身延線は富士駅で東海道線とつながっているので、新富士駅で降りた場合はバスで富士駅へ移動して乗り換えることになります。
田貫湖と白糸の滝
富士宮駅からさらに奥へ入ると、山を正面から見る場所が増えます。
田貫湖は朝霧高原の一角にある湖で、東西1キロ・南北0.5キロ・周囲3.3キロ。富士山の全景を真東に仰ぐ位置にあります。富士宮市は、4月20日前後と8月20日前後の約1週間、富士山頂から朝日が昇るダイヤモンド富士が見られると案内しています(富士宮市)。日付と場所の関係については赤富士・紅富士・ダイヤモンド富士のちがいに書きました。

白糸の滝は、高さ20メートル・幅150メートルの湾曲した絶壁から大小数百の滝が落ちる場所です。水を通す新富士火山層と、その下の水を通さない古富士火山層の境から富士山の雪解け水が湧き出しています。国の名勝および天然記念物であり、世界遺産の構成資産でもあります。JR富士宮駅から白糸の滝行きのバスで約30分です(富士宮市)。

雨の日の行き先
富士宮にある静岡県富士山世界遺産センターは、2017年12月23日に開館した施設です。県産材の木格子を使った建物で、前面の水盤に逆さ富士を映すつくりになっており、館内は1階から5階をつなぐらせんスロープを登りながら展示を見ます。設計は坂茂建築設計(静岡県富士山世界遺産センター)。山が雲に隠れた日の行き先として、覚えておくと予定が崩れません。
行く前に公式で確かめる
ここに挙げた所要時間や徒歩の分数は、各自治体・施設が公表している値です。バスの本数や運賃、開館時間は変わりますから、出発前に必ず公式サイトで確認してください。
なお、降りるかどうかを決める前に、乗っている列車から富士山がいつ見えるかは新幹線で富士山(時刻計算)で確かめられます。ただし新富士はのぞみ・ひかりの通過駅で公式の通過時刻がないため、表示される時刻は推定です。見えない日もあります。そういう日こそ、降りて近づいてみる価値があります。
出典
- JR東海ツアーズ「東海道新幹線の停車駅まとめ」 — のぞみは三島・新富士・静岡に停車せず。新富士はこだまのみ、三島・静岡はこだまと一部のひかり
- 静岡県富士市「17:新富士駅富士山口」 — 市内ビューポイント。「東海道新幹線の駅から降りると、富士山が出迎えてくれる」
- 静岡県富士市「富士駅・新富士駅間で利用できるバスのご案内」 — 両駅間で利用できる路線バス・コミュニティバスの案内
- 三島市「三島市立公園楽寿園(国指定文化財「天然記念物・名勝」)」 — JR三島駅南側、昭和29年に国の天然記念物及び名勝に指定、三島溶岩流は約1万7千年〜1万年前の噴火
- 三島市観光サイト「三島スカイウォーク」 — 全長400メートルの人道専用のつり橋、橋上から富士山と駿河湾
- 文化庁 文化遺産オンライン「三保松原」 — 富士山頂の南西約45km、砂嘴の総長約7km、約5万本のクロマツが約4.5kmにわたり叢生、羽衣伝説、16世紀以降の絵画
- 静岡市「静岡市三保松原文化創造センター『みほしるべ』」 — JR清水駅から三保方面行きバス、「三保松原入口」下車
- 静岡県「富士山 構成資産の紹介」 — 構成資産は25資産。三保松原、富士山本宮浅間大社、白糸ノ滝を含む
- 富士宮市「富士山本宮浅間大社」 — 全国の浅間神社の総本宮、湧玉池、JR身延線富士宮駅から徒歩10分
- 静岡県「しずおか文化財ナビ 富士山本宮浅間神社本殿」 — 駿河国の一宮、慶長9年造営開始・同11年正遷宮、「浅間造」は唯一の遺構
- 文化庁 文化遺産オンライン「富士山本宮浅間大社」 — 浅間神社の総本宮、湧玉池での水垢離、八合目以上は1779年に支配が認められ2004年に返還
- 富士宮市「田貫湖」 — 朝霧高原、東西1km・南北0.5km・周囲3.3km、富士山の全景を真東に仰ぐ、4月20日前後と8月20日前後の約1週間のダイヤモンド富士
- 富士宮市「白糸の滝」 — 高さ20m・幅150m、新富士火山層と古富士火山層の境から湧出、国の名勝及び天然記念物、JR富士宮駅からバス約30分
- 静岡県富士山世界遺産センター「施設概要」 — 2017年12月23日開館、県産材の木格子、水盤に逆さ富士、1階から5階をつなぐらせんスロープ、設計は坂茂建築設計
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